●会員による会員のための親睦・勉強会 第17回目●
日時:2007年3月6日 場所:築地・朝日エル会議室
題名:「英国の野菜事情」
講師:栗本義之氏

講師は、英国王立園芸協会日本支部(略してRHSJ)の専務理事。

今回は、RHSJの概略の説明に続いて、本題である英国の野菜事情、オーガニックブームの次に訪れるものなどの話をして頂いた。

*RHSJ
 本部は英国。園芸好きが200年以上前に作った集まりが起源である。総裁はエリザベス女王。毎年5月に行われるチェルシーフラワーショウは有名である。日本支部へも、植物を愛する人なら誰でも会員になれる。(会員の特典や入会方法は、RHSJのホームページを、参照して下さい)。
 栗本氏が視察で訪れた2月の寒い日でも、ガーデンは訪問者でいっぱい。枯れ草が多く霜柱がたった草地に、英国人は「来年の美しい花を予感させる」と感じる。鉢花は、花が満開に近いものより、「芽が出たばかりもの」を購入し、育てるのが楽しみ…等々、英国人ならではの感性をうかがった。

*英国の野菜事情
 歴史的背景として、新鮮な果実、野菜を食することが出来たのは一部の富裕層のみ。一般の人々は野菜を常食できる環境にいなかった。→現代でも目標とする一日の摂取量は、日本と比べても少ないようである。
 現在の英国では、他のヨーロッパ諸国より野菜物価が高い、という難点があるが、おおよそ西洋野菜と言えるものが手に入る。また用途によっての品種にも多様性がある。英国人にとって、陰の主食ともいえるジャガイモは、フライドポテト、マッシュ、ロースト、サラダ、オーブン焼き用等々、それぞれの調理法に適した品種が店頭に並ぶ。キャベツ、トマトにおいても同様だ。
 流通や栽培方法に関しては「グリーン」(環境に優しい)と「フード・マイル」(フード・マイルとは、自分の食べているものがどれだけの距離を経て食卓にのぼるかを表すこと)。がキーワードである。英国の有機野菜市場は1990年代半ばから急速に成長した。農地全体は約3%が有機に変換しており、有機市場は、米国・ドイツに次ぐ第三位の市場となっている。
 野菜を個別包装せずに「箱売り・箱詰め」で販売される流通システムが近年伸びてきている。しかし、このシステムも大型化してくると問題点が出てくる。冬場の野菜不足(英国では10月下旬から4月上旬は収穫量が極端に減る)を補うために、契約したポルトガルの農場から運ぶなど「フード・マイル」の精神から離れてしまう。日本の「地産地消」は、どちらかというと「町おこし」の感がぬぐえないが、フード・マイルは「どれだけの化石エネルギーを使って食が運ばれるのか?」と環境をまず第一に考えている。
 この二つの考えを満たす究極の方法が「自分で野菜を作る」。英国では若年層でも野菜作りが人気で、BBC2のゴールデンタイムに(金曜日夜8時半)初心者向けのハウツー番組が放映されていることでも分かる。

*オーガニックブームの次に訪れるもの
 様々な事情を抱える生産者に、オーガニック農法へと一斉転向を強いるのは非現実的である。一方、消費者にとってもコスト面で高くつくオーガニック食品に全面的に切り替えるのは困難。そのジレンマを解消する手助けをするグループが1991年に発足した。
 そのグループ名は、LEAF(Linking Environment and Farming)。その役割として「農家と一般消費者の交流接点を作り、両者の声を反映させる」。LEAF認定の野菜には、そのロゴマークを付けて店頭販売もしている。
 LEAFが訴えることは「環境が最重要課題。工業型農業の波にのまれることから回避して欲しい。農業は環境の一部であり、環境とのバランスが取れてこそ、真の農業である」。 以上、LEAFの信念や活動は、当フォーラムの今後の指針を考えるうえで大変参考になった。

補足…「スェードってどんな野菜?」
 当日配布された「英国野菜のリスト」に載っていた野菜。国内栽培が98%と高く、英国人には馴染みのある野菜と思われた。後日、各方面で調べたところ、「スウェーデンかぶ」のことで、ルタバカもこの一種。キャセロールやシチュウに使ったり、オレンジ色のものはマッシュポテトのようにして付け合わせ野菜に使われたりする。英国人に直接尋ねてみると「冬の野菜というイメージ。じゃがいもほど好まれる野菜じゃないけどね」とのことでした。

(まとめ・文責 日原幸子)


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