●「有名野菜品種特性研究会(カブ)」報告●
担当理事  栗山 尚志
【開催日時】 平成19年10月31日(水) 13:30〜17:00
【開催場所】 女子栄養大学駒込校舎5階 松柏軒
【参 加 者】 59名(食品加工・流通、種苗、市場、研究・教育機関、一般、マスコミ)
【総合司会】 理事・川口和雄、理事・川村玲子
【調理・開発】 副理事長・荒井慶子、理事・川村玲子、理事・上原悠子、
松柏軒・城戸我夜子氏、宮田寛敬氏
※研究会用のサンプルの調整ほか、カブを用いた複数の開発料理を提案され試食した。
開催の目的
わが国のカブの年間生産量はダイコンの10%の約20万tにすぎず、農水省の指定野菜13品目には入っていないが、カブの独特の風味は和洋中の幅広い料理に重宝されており、今後とも魅力ある食材の一つと思われる。
古く縄文時代後期、すでにわが国で栽培されていたとされ、多様な地方品種が分化し今もなお健在。今回の研究会では通常店頭に見られる品種改良された中小カブのほか、一部伝統的地方品種を含めて取りあげることとした。
本研究会への各界のご参加の中で有益情報交換を図り、カブの消費拡大と地方農業の発展に資することができることを期待している。
カブに関する話題提供
講師:青柳 森一氏(千葉県農総研センター北総園芸研究所 所長)
講師:高野 幸成氏(千葉県農総研センター北総園芸研究所)
カブの原産地と世界での栽培、日本への伝来、地方品種の分布、西洋型と日本型およびその中間型の特徴、代表的な品種の説明とその用途について、広範にわたり詳細な解説があった。千葉県は国内で最も栽培面積が多く、主産地では専業化が進み、被覆資材などを利用して周年栽培が試みられている。
栄養と機能性の面では、カブの葉は多くの栄養素を含み、ぜひ利用していただきたいと提案された。現在、家庭で利用されるカブは白カブがほとんどであるが、わが国の伝統的な漬物には地方の様々な和種型が利用されており、いくつか代表的なものの紹介があった。
播種〜出荷に至る栽培の実際について平易に説明され、病害虫・障害の概要とその対策、また最近の研究課題として取り組まれている、夏穫りカブの遮熱資材利用や防虫ネットを利用しての品質安定、減農薬栽培技術の紹介があった。
品種の紹介
育成メーカーにより、供試品種の紹介、および新品種の紹介があった。
食べ比べ
<用途別試食品種>
荒井慶子副理事長と女子栄養大学松柏軒宮田寛敬料理長との協議により、以下の方法を採用した。
  • 煮物(酒10%、薄口醤油と塩・・・1:1で1%)
    「夏の雪」「冬の庄」
  • 一夜漬(カブ、塩1%)
    「まるちゃん」「CRもちばな」「きらりのゆめ」「あやめ雪」
  • 保存漬物(地方品種)
    「聖護院」「日野菜」「温海かぶ」
<評価法>
男女別・年齢別にとりまとめ
食べ比べ評価のとりまとめ結果概要
(企画担当代表 理事 栗山 尚志)
平成19年10月31日女子栄養大学松柏軒(東京都豊島区駒込)で開催した表記食べ比べでは、別表評価のとりまとめ結果に示される9品種のカブについて、参集者によって4種類の特性評価と総合評価が行われた。
各特性は3段階評価(A.きわめて優れている、B.優良である、C.不満な点がある)とし、評価項目毎の感想を記載することとされた。
評価表の回収数59であったが、記載漏れが若干認められ、当該等項目の集計対象から除外した。評価のまとめに当たっては前記3段階評価をA:10,B:8,C:5と指数化した上で各評価項目ごとに有効評価指数の平均値を算出して別表に示した。従って同指数平均値は10〜5の値を示すことになる。なお、性別、年齢別集計では差がほとんど認められなかった。

<評価のとりまとめ結果>
調 理
煮  物
漬 物 (一 夜 漬)
保存漬物/地方品種

品種

形質

夏の雪
冬の庄
まる
ちゃん
CR
もちばな
きらりの
ゆめ
あやめ雪
聖護院
日野菜
温海カブ
外 観
8.2
9.6
9.5
6.9
8.5
8.9
8.5
8.4
8.3
甘 み
8.5
7.7
8.0
8.3
8.1
8.2
8.9
7.6
7.5
肉 質
8.6
7.0
8.1
8.4
8.2
8.2
9.0
8.3
8.4
うまみ
9.1
7.6
7.8
7.8
8.0
7.9
9.0
8.6
8.7
総 合
8.7
8.1
8.2
7.8
8.3
8.1
8.8
8.4
8.3
<形質別3段階評価得票率(%)>
 
外観
甘み
肉質
うまみ
総合
きわめて優れている
41
29
37
38
36
優良である
47
49
48
46
48
不満な点がある
12
22
15
16
16
品種別主な感想
(1) 夏の雪 (煮物)
・柔らかい ・出汁が良く浸みる ・外側がかたく中側がやわらかすぎる ・素材の味が劣る
(2) 冬の庄 (煮物)
・カブらしい外観で艶がある ・繊維が多い ・皮がかたい ・過熟気味か ・出汁が浸みにくい ・カブ独特の味がする ・外側がかたく中がやわらか
(3) まるちゃん (一夜漬)
・皮がかたい ・肉質が柔らかすぎる ・球のかたちがよい ・塩味がなじんでいない ・少し苦み ・辛みがある
(4) CRもちばな (一夜漬)
・うまみがある ・表皮がかたいが歯切れがよい ・青臭さがある ・肉質全体のバランスがよい
(5) きらりのゆめ (一夜漬)
・皮が柔らか ・肉質がなめらかでやわらか ・塩が良くなじんでいる ・甘みだけでなく独特の香りがある ・柔らかすぎ漬物に向かない ・しんなりしている
(6) あやめ雪 (一夜漬)
・外側と内側のバランスがよい ・少し硬い ・ピンクが美しい ・苦み・辛みがある ・渋みが美味しい  ・うまみが優れている
(7) 聖護院 (保存漬物/地方品種) ・甘みと酸味のバランス絶妙
(8) 日野菜 (保存漬物/地方品種) ・少し苦い ・辛みがある
(9) 温海かぶ (保存漬物/地方品種) ・塩加減がほどよい ・辛み強い

(7)聖護院

(8)日野菜

(9)温海かぶ
※7〜9はそれぞれ表現しにくい独特のうまみがあって美味しいとの感想が多数
本研究会において、話題提供をいただいた青柳森一、高柳幸成両氏、並びに食べ比べ用品種(食材)のご提供をいただいた各機関に対して厚くお礼申し上げます。
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