●「有名野菜品種特性研究会(中玉トマト)」報告●
【開催日時】
2012年12月4日(火)  13:00〜17:00
【開催場所】
女子栄養大学駒込校舎・松柏軒
 毎年開催されている「有名野菜品種特性研究会」は野菜と文化のフォ−ラムのメイン研究会として12月4日、東京都駒込の女子栄養大学内松柏軒において開催された。

 今回のテーマ野菜は「中玉トマトの美味しさを探る」とし、中玉トマトに焦点をあてた研究会となった。研究機関、JA、種苗会社、流通・市場関係者などが多数参加、人気のある野菜のトマトの中でも今後さらなる消費拡大が見込める中玉トマトは各種苗会社が品種改良に力を注いでいる。参加者が食べ比べを行い評価をしたうえでの討議のほか、タキイ種苗の河内修氏、JA全農の山田圭太氏による講演がおこなわれるなど、多彩な内容で中玉トマトの魅力を再確認する研究会となった。

 はじめに川口事務局長があいさつにたち、「昨今の傾向として中玉トマトを見直す動きがあります。きょうは現在流通されているほとんどの中玉トマトが提供されますので皆様から評価をしていただきたいと思います。野菜の消費は一向に増えておらず、生食だけでは限界があるようで今後の消費拡大を計るためには調理に向いた品種の開発がポイントになるかと思います。中玉トマトは調理に向いたトマトといわれており、いまいちど中玉トマトの魅力について検討したいと思います」と述べ開催の趣旨案内をおこなった。

 今研究会の担当吉岡理事による進行により開催要領にしたがって進められた。

 はじめに講演会が行われ、タキイ種苗(株)東京支店開発課長の河内修氏が「最近のトマトの品種の動向について」と題し、最近の開発傾向、消費動向、機能性などについてわかりやすく解説した。

 「医食同源という言葉があるがトマトは多くの機能性を持ち、消費者に人気のある野菜である。トマトの今後の開発目標としては温暖化の影響で黄化葉巻病や黄化えそ病等の病気が増える可能性があるため耐病性品種の開発を進めていき、農薬の使用量を減らすことで栽培者にとっても消費者にとっても安心・安全なトマトの開発を進めていきたい」とのべた。
(資料T「最近のトマト品種の動向について」※PDF)

 

 続いてJA全農営農・技術センター農産物商品開発室の山田圭太氏が「調理用トマトすずこまの特性と植物工場における周年生産体制について」と題し講演。トマトは人気がある野菜だが世界的に見ればまだまだ消費量は少ない。これは日本ではトマトを生で食べるという独特の文化が根付いているからであり、生で食べて美味しい品種が数多く開発されているが調理用には向かないところがある。


すずこま
 

 缶詰トマトの輸入量はこの20年で4倍に増え、調理でトマトを使う人が増えている。トマトの生産や消費を伸ばすには今後生食用だけではなく加熱調理用トマトを開発して裾野を広くしていかなければならない。加工調理用中玉トマトの「すずこま」はそうした経緯で開発された品種であると山田氏は解説し、「すずこま」の品種特性と生産現場での取り組み、今後の需要動向について解説した。
(資料U「調理用トマトすずこまの特性と植物工場における周年生産体制について」※PDF)

 

 今回は中玉トマトの調理特性を生かした料理が4品、城戸理事の提案により松柏軒で調理されたものが参加者のテ−ブルに並び、加熱トマト料理を試食した。

 このあと試食による生食用中玉トマトの評価を行なった。品種名を伏せた中玉トマト8品種について並べられ、外観、果皮の硬さ、肉質、香り、甘み、酸味、うまみの各項目について5段階での評価と総合評価を参加者の評価を行った。このあと品種名を公表し、各種苗会社から品種特性について説明があった。当日提供された中玉トマトは、オレンジオーレ&レッドオーレ(カネコ種苗)、フルティカ(タキイ種苗)、シンディースイート(サカタのタネ)、アマルフィー(パイオニアエコサイエンス)、華小町&華おとめ(福井シード)、MR.浅野のけっさく(渡辺採種場)の8品種。評価結果については本研究会の担当理事(吉岡理事・菅野理事)がまとめ事務局から発表がある。
(資料V「生食評価結果のまとめ」、「アンケート結果のまとめ」)

  提供されたトマトは産地、時期、栽培法により必ずしも品種の特性を100%現している状態ではないかもしれないない。試食したところいずれの品種も一定レベルの水準に達しているが、糖度と酸味のバランスがとれていること、果皮が口の中に残らないようなものが高評価を得ていたようだ。

 質疑応答では参加者からは消費者が現在求めているトマトをさらに研究してもらい、味を追求していくことが大切であること。トマトの消費量の多い国では加熱利用が多くトマトの旨味が料理に生かされている、日本でも醤油・味噌といった料理の旨味を生かす文化もあり旨味・美味しさの多様化をさらに研究し、トマトの消費拡大を進めてほしいという結論に達した。

 大澤敬之理事長が終わりのあいさつで「皆様のご協力誠にありがとうございました。今回の研究会は国内全体の消費拡大のきっかけになればということから中玉トマトを取り上げました。中玉トマトは輸入加工用トマトに取って代われる品目であり、調理用トマトは国内で生産された中玉トマトで補っていけばと考えます。当フォーラムの有名品種特性研究会はさらに改善を図りながら今後も随時開催する予定です。皆様方の一層のご支援とご協力をお願い申し上げます」とのべ、有意義な研究会をしめくくった。

(文責 事務局)
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