タイトル<野菜の学校>
●「野菜を食べ比べ」て、美味しさの真髄を学ぶ●
江澤正平さんの『野菜の学校』 NPO法人野菜と文化のフォーラム
- 2005年 10月期の学習 -
日時:2005年10月1日 PM1:30〜 場所: 東京秋葉原・ 東京都青果物商業協同組合ビル8階 会議室
“臭覚(ニオイ)”は、味覚の半分を決める●今月の格言
『10月の食べ比べ野菜』 人参・ブロッコリー・里芋
野菜は「食べ物」なけれど、「植物」である。
美味しい野菜を知る第1歩は、植物の性質を学ぶこと。
『野菜の学校』は「植物学」の講義から始まる。まずは“アタマを耕す”。
──講師は荻原佐太郎元千葉農業試験場長。
人参の講義
東洋系(アジア型)の長形と西洋系(ヨーロッパ型)の短形に大別され、アジア型は原産地のアフガニスタンから中国を経て江戸時代に、ヨーロッパ型も江戸時代後期に日本に渡来した。
今日、短型の五寸人参が主体。
栽培条件は冷涼向きで、高温は不適。地域によって露地栽培や、ビニールを使ったトンネル栽培が行なわれ、1年を通して周年出荷されている。(摘録)
ブロッコリーの講義  
つぼみのかたまり(花蕾)と茎の部分を食用にする。キャベツの仲間で、原産地は地中海沿岸で、15,6世紀の頃、ヨーロッパでは人気野菜になる。
日本へ入るのは明治期だが、本格的な栽培は戦後である。ビタミンCがレモンの2倍、カロチンや鉄分も豊富で、栄養価の高い緑黄野菜として人気がある。輸入品を含めて、周年出回るが、旬は冬から春先。
こんもりとしていて、蕾が小さくしまり、緑の濃いものが甘い。(摘録)

里芋の講義
人の住む里に出来るから由来している。
因みに山に出来るのを山芋という。東南アジア一帯に分布する“taroイモ”の仲間で、渡来は米より古く、稲作以前の主食だった。
高温性、多水分の個性をもち、地下茎の肥大した部分が食用になるが、地下茎は伸びずに肥大し、楕円形か卵形の塊茎に生育し、中心に親芋を作り、小芋、孫芋、曾孫芋に分球を特徴としている。(摘録)
 
「野菜の学校」の呼び物、“味の辻説法”・・・江澤正平さん、かく語る!
「作りやすく、病気になり難い、収量の多い野菜ばかりを追求。生産も流通も、消費者も安価を望み、生産性を上げることばかりに血眼になってきた。それでは、本来の“食べ物”の観点が欠けている。味は“舌”だけでないのだ。“ニオイ”が、どんどん消している。不満!だね。味は臭いをともなって、しかるに、美味は、半分がニオイと知るべし!
それともう一つ、百に一つや二つの伝統野菜があっていい。旨いもの食べるには、2〜3割高くて納得するべし。卸も小売も消費者も皆んなで、美味いものを普及する全体組織を作っていく。
今の時代、“味感覚の迷子”ばかりで、やり切れない。
美味しい野菜は時代に引き継ぐ心意気と、お裾分けの思いやりだ。野菜は文化なのだから。」
そこで今月の教訓は、『美味しい野菜を食べるために、食べる人、作る人、売る人が三位一体で団結せよ』

「最終授業は「食べ比べ」── “利き味”はいかに?!
ニンジンは赤い部分が美味しい! ジュースもいい!人参は皮下に旨味をたくわえ、しかるに洗い方にお気をつけて。ブロッコリーは茹る時間に味覚差あり、サッと茹でてパリパリのサラダ感覚!
軸が旨い、と食べて知る。サトイモは花が咲かなければ“種子”を取れない、然るに、日本で花の咲かないサトイモは、多様に品種改良ならず、昔ながらの美味い味を伝承してきた,と江澤先生曰く。

本日の教室は談論風発、意見活発でした。 
今回の受講生36名。お世話をした人9名。調理指導・荒井慶子さん

【閑話休題】
東京青果個性園芸事業部 の東海林邦子さんの、食べ比べ野菜の産地と市況の説明。
北海道ニンジンは高温続きでベストでなく中国産も入荷。向陽 2 号の人参は高値で推移。
国産のブロッコリーや里芋は時期的に早く早生系のもので味は会場でお試しを。

人参・ブロッコリー・里芋の品目一覧表 (17.10 供試野菜協力:東京青果)

品 目
産 地
品 種
種苗育成
備 考
人参 北海道 JAようてい真狩 千浜 横浜植木  
北海道 北印(富良野) 向陽2号 タキイ  
中国   ベータリッチ サカタ  
ブロッコリー 北海道 富良野 ピクセル サカタ  
福島 農産未来 ピクセル サカタ  
長野 JA佐久浅間 三岡 ピクセル サカタ  
アメリカ 不詳 不詳 不詳  
里芋 埼玉 JAいるま野 蓮葉    
千葉 Jグリーンやちまた 石川早生    
愛媛 藤田青果      
ニンジン  
子供達が嫌いな代表野菜の一つ。ポリフェノールなどの成分、栄養素、甘さ、香りは表層により多く含まれている。しかし栄養価や香りが高くても子供達に受け入れてもらえなければ食べてくれない。
最近は甘味が多くニンジン臭さが少なく品種改良されて、食べやすく、ジュースにするととてもおいしい物もある。生産地では出荷調整時に泥と一緒に表皮の一部まで洗い落とされている。試食では泥付きのほうが美味だった。
ブロッコリー  
ゆで方に好みがあり、半生のほうが美味ではないかとする方がおられた。
サンプルはいずれも小振りで食味の差がなかった。
米国輸入産が国内産に遜色なく、冷蔵輸送の技術が発揮され健闘している。
サトイモ
 
講義に寄れば国内ではほとんど開花せず交雑育種は行われていない。
よって固定種で古くから各産地で選抜が行われ産地の環境に適した良い物が受け継がれ系統を分化している。サンプルは産地の土質の差がはっきりしている。千葉、埼玉の火山灰土に比べ愛媛は粘土質のように見受けられる。
里芋のおいしさは「有機質多用の肥沃な土質と豊かな水」つまり「通気性と保水性の良い土」が育てる。今年は産地に適雨量があり作柄が良く早生系といえども丸みのある形の良い物で柔らかく、とろっとした粘りと独特の甘みがある。これから冬に向けてより晩生種の「土(ど)垂(たれ)系」に移行して本格的な味が楽しめよう。
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