タイトル<野菜の学校>
●「野菜を食べ比べ」て、美味しさの真髄を学ぶ●
江澤正平さんの『野菜の学校』 NPO法人野菜と文化のフォーラム
- 2006年 1月期の学習 -
日時:2006年1月7日(土) PM1:30〜 場所: 東京秋葉原・ 東京都青果物商業協同組合ビル8階 会議室
作法通りに食せ!●今月の格言
『食べ比べた野菜』:小松菜・春菊・水菜
野菜は「食べ物」なけれど「植物」。
その本質を見極め、野菜の美味しさ知る。『野菜の学校』では「植物学」の講義で、先ずは“アタマを耕す”。
──講師・荻原佐太郎元千葉農業試験場長のお話。
コマツナ
アブラナ科ツケナの一種。
アブラナ科アブラナ属にある不結球性菜類の総称をツケナ類と呼んでいるが、これにはコマツナ類をはじめ、ハタケナ類、ミズナ類、タアサイ類などがあり、タカナ、カラシナも含む。
ツケナ類の原産地は中央アジアからヨーロッパで、日本には奈良時代以前に中国から入り、各地でさまざまな地方種を発達。コマツナは地名に因んでおり、江戸時代に東京・小松川で改良された。この地域で周年栽培され、年間を通して出荷されるが、品種的には本来、寒さに強く、霜に当てるほどよい味になるといわれる。
シュンギク
キク科キク属。
シュンギクの呼称は関東で、関西ではハルナと呼ばれる。原産地は地中海沿岸にあり、中国、朝鮮を経て伝わった野菜だが、もともとは花を観賞する植物である。食用にしているのは日本や、中国である。
大葉、中葉、小葉というように、その葉の大きさや切れ込みの程度によって分けられる。露地、ハウス、トンネルの栽培法があり、高温長日に弱く、石灰欠乏になりやすい。収穫には茎を摘んで利用する摘み取り、根ごと引き抜く抜き取りがある。
ミズナ
アブラナ科ツケナの一種。
日本の固有種であり、京都に古くから栽培されてきた漬菜(ツケナ)は日本特産。水菜は京水菜、京菜、千筋京菜とも呼ばれ、名の起こりが土と水の力だけで作ることからきたと言われる。
ほかのアブラナ科野菜とは違い、特長として種子の休眠性が長い。分げつ(叢性になる)が多く、生育するとよく枝分かれし、一株の葉数が600〜1,000枚にもなる。古くからの大株仕立てと、ハウスの小株の周年栽培が行われている。
「野菜の学校」の呼び物、“味の辻説法”・・・江澤正平さん、かく語る!
「美味しい野菜が、なぜ買えないのか。先月、こんな質問をうけたので、今日はそのことに答えよう。求めている野菜が手に入れられない理由は、食べる人、作る人、売る人みんなが“不安”になるからである。
例えば、旨いといわれる伝承野菜を作るとすると、生産者は未経験に自信をもてず、販売者は新商品に売る確信をもてず、消費者は新しいものに躊躇する…こうした不安ばかりにつつまれ、従って、特別な野菜が世に出回りにくくなる。
伝承野菜がネットで買える。だが、野菜は生き物で、新鮮が決め手であることを肝に銘じよ。諸兄よ、八百屋の店頭に出よ! そして楽しくなれ! 食べる人、作る人、扱う人の関係をだいじにして、野菜という品物と人間の関係から、人と人の関係にする。楽しい売り場、楽しい会話を提唱したい」

「食べ比べ」── “利き味”はいかに?!
「味の背景にあるのは、品種なのか栽培地なのか?」
「耐寒性が増せば、野菜は寒さに糖度を貯えるのが植物の生理」
「自然条件に影響をうけ、本当はじっくり育てれば旨い(荻原先生)」
産地別&品種別野菜を舌で味わい、熱気の舌戦。全員の「人気投票」で締めくくる

今回の受講生28名。お世話をした人9名。調理指導・荒井慶子さん
【閑話休題】
東京青果個性園芸事業部の東海林邦子さんの、食べ比べ野菜の産地と市況の説明では、寒波の影響があり、入荷少なく、市況は高値。本日の品揃えには、コマツナの品種特定がむずかしく、形状の特徴で選んだ。
今回の利き味に出品された小松菜・春菊・水菜の品目一覧表
(18.1 供試野菜協力:東京青果)

品 目
産 地
品 種
種苗育成
備 考
コマツナ 群馬 JA新田郡 よかった菜 カネコ 200g袋
  埼玉 マルキ出荷組合 わかみ他 サカタ 500g束
  千葉 JA西船橋 みなみ他 トーホク 300g束
  茨城 健農うまかクラブ 夏楽天 タキイ 250g袋
シュンギク 栃木 JAしおのや矢板 さとゆたか サカタ 中葉春菊
  茨城 JAなめがた玉造 おたふく 中原採種場 大葉春菊
  千葉 JAちばみどり干潟 改良きく3号 協和種苗  
  東京 大畑繁雄 中葉春菊   根つき春菊
ミズナ 茨城 PGA はかた千緑水菜 中原採種場  
  千葉 JAかとり府馬(山田) 千筋京水菜 丸種  
  京都 全農京都 千筋京菜    
ホウレンソウ 栃木 JAおやま しもゆたか 渡辺採種場 お土産用・縮みホウレンソウ(おまけ)

コマツナ
栄養価の高い健康野菜。
ハウスなどを利用すると年間に10作は可能である。5〜9月は約20日、10〜4月は約80日で収穫できる。消費者は栄養価の高い象徴とし葉色の濃い物を選ぶが、余り濃すぎる物は窒素肥料が多く問題があるが、しかしこの時期は寒さによる濃さでとても甘い。
生産者は収穫・結束・袋入れに省力的な草姿を重視している。鮮度が大事で、日持ち・貯蔵性・輸送性がないので大都市近郊に栽培されてきた。講義によれば、コマツナはこの10年間の品種改良が盛んで近縁種(ターツァイ、チンゲンサイ、ミズナなど)との交雑により育成されている。本家の「東京・小松川」では弘前大学と共同で開発を進めようとしている。栄養価的にはカルシュームやカロテンがホウレンソウより多い。
シュンギク
軟弱野菜の中でも特に日持ちが悪い緑黄色野菜。
カロテンは青シソ・ニンジン(8,700μg/100g)は別格として、コマツナ並の4,600μg含まれる。鍋物用途の多い10〜4月に2/3が出荷。栽培は容易だが収穫、調整に労力がかかる。香りの高い中葉系を中心に育成されているが今回は特別に大葉系の軟らかいサンプルを試食・食べ比べができた。
ミズナ
人気上昇中の野菜。
細葉で切れ葉がミズナ、よく似たもので中細葉の丸葉系はミブナ(壬生菜)。耐寒性の強い野菜。立ち葉で色濃く葉身・葉柄が細く、葉軸は白く光沢があり、柔らかで歯切れが良く、やや辛みを帯びてしゃきしゃき感・香味のある物が上等。
会場から昔東京には「こんな物もあった」ということで、しばしその話題で盛り上がった。
 
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