タイトル<野菜の学校>
●「野菜を食べ比べ」て、美味しさの真髄を学ぶ●
江澤正平さんの『野菜の学校』 NPO法人野菜と文化のフォーラム
- 2006年 2月期の学習 -
日時:2006年2月4日(土) PM1:30〜 場所: 東京秋葉原・ 東京都青果物商業協同組合ビル8階 会議室
日本で唯一の『べジタ・テースト・スクール』
ジャガイモ
ナス科ナス属の多年草。地下茎の各節から出た匐枝の先端が肥大して塊茎(イモ)になったもの。原産地は南米アンデスの高原地帯。5世紀頃、先住民の主食に栽培され、コロンブスのアメリカ大陸発見からヨーロッパへ渡り、日本にはオランダ人の手で16世紀に伝えられるが、本格的栽培は明治以降で、アメリカからの輸入された品種である。冷涼期、短日生育で春、夏、秋、暖地の冬作も可能。
男爵はアメリカから明治40年に導入、功労者の川田男爵に因む。メークイーンはイギリスから大正5年に導入。
サツマイモ  
ヒルガオ科サツマイモ属の多年生草本。栽培は栄養繁殖で、イモ苗を用いる。根は吸収根(細い根)と肥大根(太い根)になり、苗の節から発根時に分かれる。深根性で養水分の吸収良く、乾燥に耐え、酸性土壌に育ち、弱光に光合成するので悪天候に耐える。根の一部が肥大して塊根になったものを食用にする。原産地中央アメリカで紀元前3000年前から栽培され、コロンブスのアメリカ大陸発見でヨーロッパ渡り、世界に広がる。日本には17世紀、琉球から薩摩経由で伝わり、青木昆陽の手で全国に広まる。薩摩の特産から薩摩芋と呼ばれ、甘みのナンバーワン野菜から甘藷の名がある。
“味の説法”・・・江澤正平さん、かく語る!
「ジャガイモにサツマイモの歴史をもっていたら“いのち“は落とすことなかった、という話をしよう。ジャガイモが日本に入るのは明治4年、北海道だが、サツマイモはそれ以前、江戸期、沖縄を経て鹿児島に渡り、八代将軍・徳川吉宗により普及する。長崎県五島列島に干したサツマイモの“カンコロ餅”を見るように、日本列島に普及し、救荒作物の役目を担っていた。ジャガイモの普及はずっと後になり、東北などの大飢饉が救えなかった。このことは、野菜史の忘れてならない事柄である。

さて、ジャガイモは世界で3.9億トン生産する重要野菜だが、19世紀ヨーロッパにおいて、ドイツではジャガイモ作りを怠るものに“鼻切り”“耳削ぎ”の刑罰を処して奨励し、フランスではパリ郊外に東京ドーム規模の畑を塀で囲み、貴族のものとして一般市民に目隠しし、「貴族は何を食べているのか…」と興味を煽り、ジャガイモ奨励を計ったのである。ドイツ的、フランス的方策の違い・国民性に興味をそそるが、サツマイモでも簡単に渡来して来たのでない。原産のアメリカ大陸からポルトガル、スペイン人が持ち帰り、フィリピンから中国に渡る船の帆に隠して行った。日本でもちょんまげの裏に入れ、門外不出の目を逃れた苦心談が残る。先人が飢饉を救った努力を忘れてならない!」
「食べ比べ」──“利き味”やいかに?!
「ジャガイモやサツマイモでは“デンプン価”を話題にするが、味との関係?」 「産地や寒さといった自然条件で、“デンプン価”は異なるの?」 「同じ品種でも、味が違うのはなぜなのか?」 「イモは大きさで味もちがうの…?!」
▼デンプン価は含有量のこと。男爵はメークイーンより高く、高いとホクホク感があり、低いメークイーンは煮崩れせず、シチューやカレー向き(江澤先生)
▼ジャガイモ、サツマイモは貯蔵中に糖化現象が起き、甘さは増す(荻原先生)
▼野菜は栽培者の心掛けで、味は美味くなり不味くもなる。
▼高系14号を始め、産地では形状で選別。小さくて旨いものもある。熱気の舌戦。産地別&品種別を舌で味わい、全員の「人気投票」で締めくくる。
本日の受講生33名。お世話をした人8名。調理指導・荒井慶子さん
【閑話休題】
東京青果の各担当者より市況解説では、寒波の影響を受けて、野菜価格は高値である。
最近の新品種ジャガイモ・サツマイモおよび加工品について、みかど農産(株)社長・中本賢様より特別ご講話をいただいた。
ジャガイモ・サツマイモ・キノコの品目一覧表
(18.2 供試野菜協力:東京青果)

品 目
産 地
品 種
種苗育成
備 考
ジャガイモ 北海道 JA今金 男爵    
  北海道 JAようてい キタアカリ    
  北海道 JA芽室 メークイン    
  北海道 シレトコイオン ベニアカリ 紅男爵  
  鹿児島 JA徳之島 デジマ    
サツマイモ 茨城 鬼沢俊行 ベニアズマ    
  千葉 JAかとり ベニアズマ    
  千葉 JAかとり 高計14号 大栄愛娘  
  石川 金沢市 ことぶき 五郎島金時  
  福井 芦原市 高系14号 とみつ金時  
  徳島 JA里浦 高系14号 なると金時里娘  
    みかど農産 パープルスイートロード ツヤムラサキ  
キノコ 沖縄 グロワール   アワビタケ 軽くあぶり塩
  長野 JA中野   ヤマエネキ ベーコン巻
  福島 鈴木農園   ジャンボなめこ 天ぷら
バター炒め
  北海道 スリーピー   タモギタケ 炒め物
  群馬 赤城きのこ本舗   ハクレイタケ しゃぶしゃぶでポン酢
  山梨 はなびらたけ本舗   ハナビラタケ レンジで加熱してポン酢
  長野 JAちくま   山伏茸 コンソメスープ
  茨城 ファングァス   雪の羽衣 軽くあぶり塩

ジャガイモ・サツマイモ
主力品種から新品種も加わり、食味・肉色・肉質の異なる各地からの産品を試食・食べ比べられた。まだ、近くのお店では手に入らない品種もあり勉強になった。みかど農産(株)からは、いろいろな販売方法が提案された。サツマイモでは高系14号が3産地で試食できたが微妙に食味が異なり、江澤氏によればウイルスフリー苗の重要性を指摘された。(関連項目は本会のいも類新品種需要拡大フォーラム参照) 会場での食べ比べの評価は票が分かれ、産地の面目が保たれた。
キノコ  
本来は「野菜」には分類されないが、食卓に頻繁にのぼる重要な食材である。筆者には見たことも、食べたこともないキノコが登場し興味津々であった。100g当たり高い物で140円程度、その他は40〜70円(卸値)でお手頃で是非利用したい。キノコ料理は和風・洋風・中華風のいずれかの料理法をベースとた応用料理で、素材の持つ基本的な味・食感・におい・歯触りにより料理法により適・不適があり、保存法を含め(独)農林水産消費技術センター(きのこ(その2))に公開されています。

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