●特別講演会「50℃洗いで広がる野菜の可能性」報告●
【大澤敬之理事長ご挨拶】

 本日は多数のご参加をありがとうございます。

 鮮度保持といえば予冷しかない現在、真空予冷装置、差圧予冷装置、冷水冷却予冷装置など、いずれにしても多額な設備投資が必要です。50℃を作り出せばよいとなると、これは大きな流通革命の可能性を秘めています。

 それ以外にも様々な利用可能性があるようで、それぞれの場で検証しながら発展できればと考えます。私自身も、いろいろな角度から勉強したいと、今日は楽しみにまいりました。今後、また皆さまのご意見も頂戴したいと思います。よろしくお願い致します。


大澤敬之理事長
 
【NHK『ゆうどきネットワーク』より"50℃洗い"番組から抜粋】

 NHKの番組で放送された映像から、以下の内容を抜粋して放映し、まず"50℃洗い"のポイントを参加者で確認しました。

  • "50℃洗い"は料理革命であることを伝える調理現場
  • 50℃で洗っても、ビタミンCなど栄養素は保たれていることの検証
  • 電子顕微鏡で見ると、50℃洗いによって細胞内まで水分が取り込まれ、ふっくらする様子
  • 50℃洗い後保存したレタスは、葉がパキパキするほど新鮮なまま保たれている様子 等々
【タカコ・ナカムラ氏のお話】
<タカコ・ナカムラ氏ご紹介>
料理研究家。マクロビオティックを学んだ後、アメリカに渡り、Whole Foodに目覚める。現在、食と暮らしと環境をまるごと学ぶ「タカコ・ナカムラ Whole Food スクール」を主宰。平山一政氏の「50℃洗い」効果をいち早く認め、自身のスクールなどに取り入れるだけでなく、平山氏と共にメディアを通じて広く発信し続けている。
  「"50℃洗い"はノーベル賞なみの大発見では?!」
 
タカコ・ナカムラ氏
●何て、おいしいんだろう!

タカコ・ナカムラ氏
 

 私は平山先生に、2005年、早稲田大学で出会いました。当時、先生は100℃ではない低温によるスチーミングを研究中でした。低温スチーミングをほどこしたにんじんをいただいた時、ものすごく甘く、ジャムのようなペーストに、「何て、おいしいんだろう!」と感激しました。それから、先生のお宅に伺うようになったのです。

 平山先生のお宅の冷蔵庫内は、いわゆるタッパーがギッシリ。ランチでは、タッパー内の蒸し野菜を何種類か皿に盛り、温泉卵をのっけてポン酢をかけていただきました。それがおいしい! そういう料理のやり方があるんだと、まさにカルチャーショックでした。

 その後、低温スチーミングを私の料理教室でも調理の1つとして取り入れていたのですが、料理の前に手間がかかるため、本当のよさがなかなか伝わらなかったのです。

 ところが2、3年前、「50℃で洗うと同じような効果があるんだよ」と先生に教わり、びっくりしました! 
 
●調理に先入観がなかったのが幸い

 私は山口県の出身で、両親が割烹を営んでいた関係でこの世界に入ったため、調理を正式に学んでいません。それが幸いしたようで、調理に対して先入観がなく、何でもやってみようという姿勢でいます。

 50℃で洗うと、確かに、野菜、肉、魚介がおいしくなります。とはいえ、今までの常識と合わないことがいっぱいなので、生徒の質問に答えられないことも多く、いつも平山先生に訊いていました。

 洗わないのが常識のきのこも洗い、レタスなどの葉物、もやし、いちごなど、1つずつ試した結果、今日があります。

 50℃洗いは、プロのフレンチ、中華でも、世界中の誰もがやっていません。私はノーベル賞くらいの大発見だと思います。

 鮮度よく、日持ちがよくなり、野菜のアクやエグミ・苦みなど、食べないほうがいい成分は除かれ、食べたほうがいい成分だけが残って、野菜や果物本来の味がするのです。糖度が上がっているわけではないのに、甘く、おいしく感じるのは、そのせいかと思います。

 

●"50℃洗い"は、まだまだ進化する

 "50℃洗い"はまだまだ発展途上で、これからの発見があるだろうと楽しみです。私自身、本を書くたびに発見があり、進化中です。

 ぜひ、まずは調理に取り入れていただきたい。特に寒い季節、実家では例えばおせちの時季、材料を冷たい流水で洗うのはイヤな思い出でした。これからは堂々と洗える。農家や水産業者、東北など寒い地方の方には特に伝えたいですね。

 私はまた、これまで料理をおいしくするのは、「愛情、勘、経験」などと聞かされてきましたが、「料理は科学だ」とも教えていただきました。こうした科学的な分析や情報がもっと料理分野にも広がることを願ってやみません。

(文責 脇ひでみ 理事)
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