第2章 野菜のおいしさに関する検討結果の概要
6 にんじんの味に関する消費者調査
1 調査の実施概要
(1) 調査の方法と調査時期
   消費者調査は、イトーヨーカドーの協力により同社の千葉県内の幕張店において、2008年1月30日(水)と31日(木)の2日間にわたり実施した。

 調査の実施方法は、30日については来店者に対して調査対象品目であるにんじん3品目(向陽二号、馬込、ひとみ五寸)について、試食を実施して、食べ比べ後ににんじんを購入した消費者に対して、アンケート調査を実施した。また、31日には試食による食べ比べは行わず、にんじん3品種のいずれかを購入した消費者を対象にアンケート調査を実施した。

 

(2) 調査対象者の属性と回答数
   にんじん3品目を食べ比べて試食後に購入し、アンケート調査に協力した回答者(以下、試食あり)は74人、にんじん3品目のいずれかを購入した、試食なし(以下、試食なし)の回答者は66人であり、消費者を対象としたアンケート調査の回答者合計は140人である。

 これを性別にみてみると、回答者合計140人のうち、女性は133人(95.0%)、男性は7人(5.0%)であり、女性が圧倒的に多い。

 次に、年齢別構成でみると、回答者合計140人のうち、10歳代から20歳代は3人(2.1%)、30歳代から40歳代は50人(35.7%)、50歳代以上は87人(62.2%)である。

 

2 アンケート調査結果
(1) にんじんの嗜好
   調査回答者がにんじんを好きであるのかの調査結果を合計でみると、「好き」が74.3%と圧倒的に多く、次いで「普通」16.4%であり、「やや嫌い」と「嫌い」は5.0%に過ぎなかった。

 

(2) POP表示について
   にんじんを購入した回答者に対して、売場に掲示してある3品目の説明ポスターであるPOPをみたのかについて調査合計では、「はい」と回答したのは42.9%、「いいえ」と回答したのは57.1%であった。これを年代別にみると、30代から40代では、「はい」が56.0%と過半数を占めたが、50代以上では「はい」は34.5%と低く、「いいえ」が65.5%と過半数を占め、高年齢ではPOPを見ていない人が多くなっている。

 

(3) 購入したにんじんの品種
   にんじんを購入した回答者に対して、3品目のどの品目を購入したのかについて調査合計では、最も購入の多い品種は「ひとみ五寸」58.2%と過半数を占め、次いで「馬込」22.9%、「向陽二号」18.6%の順であった。

 

(4) 試食あり回答者を対象としたにんじんの購入理由
 
1) 購入した品種を選択した理由
   試食をして購入した消費者に購入した品種を選択した理由について調査した結果は、「試食してみて」が79.7%と圧倒的に多く、次いで「実物を見て」13.5%であり、「POPを見て」は皆無であった。
 
ア. 実物を見て
   実物を見てと回答した10人の回答者に対して、何に注目したのかについては、「色」9人(90.0%)と多く、「形」は1人(10.0%)であった。
イ. 試食してみて
   試食してみてどのような項目がポイントなったのかについては、「甘み」が64.4%と過半数を占め、次いで「風味」18.6%、「うまみ」15.3%等の順であった。
2) 試食して購入した品種を選んだ理由
   そこで、3品種の中で選んだ品種のどのような項目がポイントのなったのかを、品種別に見てみると以下のとおりである。
 
@ 向陽二号
   向陽二号を選んだ8人について、その品種を選んだ理由は、「試食をしてみて」が8人であり、「実物を見て」は皆無であった。次に、試食をしてみてどの項目に注目したのかについては、「甘み」が6人(75.0%)、「風味」が2人(25.0%)である。
A 馬込
   馬込を選んだ13人について、その品種を選んだ理由は、「試食をしてみて」が10人であり、「実物を見て」は1人等である。次に、試食をしてみてどの項目に注目したのかについては、「風味」が7人(70.0%)と多く、次いで「うまみ」2人(20.0%)、「甘み」が1人(10.0%)である。馬込の持つ品種の特徴である風味の強いにんじんであることが、試食してみての購入理由となっていることが注目される。
B ひとみ五寸
   ひとみ五寸を選んだ53人について、その品種を選んだ理由は、「試食をしてみて」が41人であり、「実物を見て」は9人等である。次に、「実物を見て」と回答した9人に、どの項目に注目したのかについては、「色」が9人のみである。また、「試食をしてみて」と回答した41人に、どの項目に注目したのかについては、「甘み」が31人(75.6%)、「うまみ」7人(17.1%)、「風味」が2人(4.9%)である。
(5) 試食なし回答者を対象としたにんじんの購入理由
 
1) 購入した品種を選択した理由
   3品目のいずれかを購入した消費者に品種を選択した理由について調査した結果は、「POPを見て」が56.1%と過半数を占め、次いで「実物を見て」25.8%である。
 
ア. POPを見て
   POPを見てと回答した37人の回答者に対して、POPのどの項目に注目したのかについては、「風味」26人(70.3%)、「食感」6人(16.2%)、「甘み」5人(13.5%)の順である。これを、年代別にみると、30代から40代の回答者17人では、「風味」10人(58.8%)、「甘み」4人(23.5%)、「食感」3人(17.6%)の順である。50代以上の回答者19人では、「風味」が15人(78.9%)ときわめて高いことが特徴である。
イ. 実物を見て
   実物を見てと回答した17人に対して、何に注目したのかについては、「色」9人(52.9%)、「形」8人(47.1%)である。これを年代別にみると、50代以上の回答者10人では、「色」が7人(70.0%)と多くなっていることが特徴である。
2) 試食なしで購入した品種を選んだ理由
   そこで、3品種の中で選んだ品種のどのような項目がポイントのなったのかを、品種別に見てみると以下のとおりである。
 
@ 向陽二号
   向陽二号を選んだ18人について、その品種を選んだ理由は、「POPを見て」は7人(38.9%)、「実物を見て」は8人(44.4%)であり、「その他」は3人(16.7%)である。
A 馬込
   馬込を選んだ19人について、その品種を選んだ理由は、「POPを見て」が13人(68.4%)であり、「実物を見て」は1人(5.3%)等である。
 次に、「POPを見て」購入した13人について、POPのどの項目に注目したのかについては、「風味」が11人(84.6%)、「食感」が2人(15.4%)、「甘み」は皆無である。馬込の持つ品種の特徴である風味の強いにんじんであることに、消費者の注目が集まった調査結果となっている。
B ひとみ五寸
   ひとみ五寸を選んだ29人について、その品種を選んだ理由は、「POPを見て」が17人(58.6%)であり、「実物を見て」は8人(27.6%)等である。これを年代別に見てみると、30代から40代の回答者12人では、「POPを見て」9人(75.0%)、「実物を見て」2人(16.7%)であり、これに対して50代以上の回答者17人では、「POPを見て」8人(47.1%)であるが、「実物を見て」も6人(35.3%)と多くなっており、高齢者の方が「実物を見て」購入する割合が高くなっていることが注目される。
 次に、「POPを見て」と回答した17人にPOPのどの項目に注目したのかについては、「風味」11人(64.7%)、「甘み」4人(23.5%)、「食感」2人(11.8%)である。これを年代別に見てみると、高齢者では「甘み」よりも「風味」をより注目して購入していることが明らかとなった。
(6) 購入したにんじんを使用した料理
  1)調査合計でみた品種別にんじんを使用した料理
   購入したにんじんについてどのような料理に使用するのかについて調査合計で見てみると、「和風煮物」40.7%と最も多く、次いで「サラダ」35.0%、「洋風煮物」30.0%、「野菜炒め」24.3%等の順であり、「その他」も28.6%みられた。これを年代別に見てみると、30代から40代では、「サラダ」が36.0%と最も多く、次いで「和風煮物」32.0%であるのに対して、50代以上の高齢者では「和風煮物」が46.8%と高くなっていることが特徴である。
(7) 複数のにんじんの販売についての考え方
   売場において異なる特徴を持つ、複数のじんじんの販売方法についてどのように考えるのかを調査合計でみると、「選択肢が多くなるので、POP等で表示して積極的に販売して欲しい」は87.1%と圧倒的に多く、「にんじんであればよいので、いろいろな種類は必要ない」は12.9%に過ぎない
(8) 今後、販売が望まれるにんじんの品質
   今後、どのような品質のにんじんの販売が望まれるのかについて回答者に調査した結果は、試食ありと試食なしの回答者の考えに大きな違いは見られない。そこで、主な回答者の今後望まれる品質のにんじんについての考えは以下のとおりである。
 
  1. 甘みのあるにんじん
  2. にんじん臭くない、くせのない味
  3. 昔ながらのにんじんらしい味
  4. 昔ながらのにんじんの香り・風味のあるもの
  5. 生で美味しく食べられる、サラダに使えるもの
  6. 鮮度・新鮮、安全・農薬を使用しないもの
(宮城学院女子大学 安 部 新 一)


>> 野菜のおいしさ検討委員会 平成19年度報告書 目次へ