タイトル<野菜の学校>
● 2009年度「野菜の学校」 ●
- 2009年6月授業のレポート -
開催日: 2009年6月6日(土) 会場:東京都青果物商業協同組合会議室

◆テーマ野菜:きゅうり  ◆旬野菜:梅

【講義】
(1)
きゅうりの歴史、品種、生育、作型など
日本農園芸資材研究会 稲山光男氏
(2)
栄養、調理保存
M-cooking-studio 松村眞由子氏
(3)
市場情報、出品品目紹介
東京青果(株) 澤田勇治氏
(4)
旬の野菜「梅」情報
和歌山県農業協同組合連合会東京事務所 前田孝男氏
【講義より】
 野菜は原産地や来歴を知って、ぜひ大事に食べてほしいということで、まず、きゅうりの来歴についてのお話がありました。日本へは中国を経由して10世紀前には入っていたものの、江戸時代までは重要な野菜ではなく、江戸末期から明治にかけて栽培が広まりました。しかし、うり類には苦みがあるため、食べにくく、1960年代くらいまでは、きゅうりもかなり苦みのあるものが多かったそうです。きゅうりの栽培が最も盛んだったのは昭和38年頃。その後、ビニールハウス栽培などが普及し、作付面積は4割程度に落ちましたが、生産量は8割強にとどまり、消費量も減ったものの、まだまだ維持されています。産地では、春と秋の作型を組み合わせて、通常は年に2回作るそうです。
 きゅうりには、伝来ルートの違いから黒イボ系と白イボ系があります。黒から白に主流が変わった黒白戦争といわれる出来事があり、講師がまさにその仕掛け人(?)だったという興味深いお話もありました。また、元々鮮度の指標だったブルームが出ないブルームレスきゅうりがもっぱら流通するようになって久しくなります。白イボ、ブルームレスの市場席巻は、味より見た目優先の風潮によるもの。きゅうりのおいしさとは何か? おいしさは甘さとも違います。講師は、視・聴・味・触・嗅のバランスのとれた、季節や土地に合った品種をもう一度見直すべきではと、かつての自戒をこめたお話でした。
 栄養・保存・調理の基本的な知識は、管理栄養士の松村眞由子氏の担当。きゅうりにはカリウムが多く含まれていて、利尿作用があります。カリウムはナトリウムを排出する作用があるので、とかく塩分摂取量が多い日本人にとってはありがたい野菜。この日本人の塩分摂取量の最新基準が、男子が10gから9gへ、女子が8gから7.5gへと改定されたという最新情報もありました。また、きゅうりのパックが美容によいと昔からいわれますが、紫外線に当たるとシミになりやすいソラレンという成分が含まれているので、逆効果であることも教えていただきました。
 旬の食材は「梅」。上質の南紅梅の産地で有名な和歌山。クエン酸のかたまりである梅の効用、梅干しを手作りをする人が減っている現状などを前田孝夫氏にうかがいました。まだ稀少ですが、これから人気が出そうな品種として、ピンク系のシロップや梅酒ができる紅南高、中まで紫色のパープルクイーンという小梅が紹介されました。
 品目紹介は澤田勇治氏。ブルーム2種とブルームレス2種、イボなしでサンドイッチなどの業務用に品種開発されたフリーダム、近年復活・改良の四葉(すうよう)、四川(しせん)、加賀の伝統野菜の加賀太2種、固定種の半白(受講生による提供)、料亭・レストラン需要の花付きのミニきゅうりなど計11種の紹介。近年、加賀太などの伝統野菜の復活が見られますが、地元では太いタイプ、東京では小ぶりなタイプと好みが分かれるといった話もありました。
T888またはグリーンラックス
<ブルームレス>(福島)
ハイグリーン21
<ブルーム>(埼玉)
ハイグリーン21
<ブルーム>(石川)
ハイグリーン21
<ブルームレス>(埼玉)
フリーダム
<イボなし>(埼玉)
四葉(群馬)
四川(群馬)
加賀節成(石川)
加賀太(石川)
馬込半白(東京)
花付きミニきゅうり
ひめきゅうり
【食べ比べ】 出品11品目:生で5品目(ブルームレス2種とブルーム、イボなしのフリーダム、四葉) 輪切りの塩もみで4品目(ブルームレス2種とブルーム、四葉) 試食として加賀太と馬込半白の輪切り

 きゅうりの品種による特性を、五感でシンプルに比較するために、縦4つ割りにしたもの、スライサーで輪切りにして塩をした後にしぼったものを用意。縦に細長く切ったのは、きゅうりの上下では食感やエグミなどが違うからです。グループ討議の後、山本謙治氏の司会で挙がった感想としては、ブルームきゅうりが香りと甘み、ジューシーさがあるという声がある一方、ブルームレスきゅうりのほうが食べ慣れているせいか好ましいという声も。甘さより歯ごたえがキーワードになる傾向も見られ、四葉に人気が出てきた背景がうかがわれました。山本氏からは、品種より台木で歯ごたえが変わる話があり、新潟で皮と実のかたさが同じきゅうりを食べた貴重な体験をうかがいました。
 加賀太と半白の試食では、加賀太は食感がなめらかで、清涼感がある、半白は、風味はよいが甘さがないといった感想。もっとも、半白に関しては、スライスではなく肉質を生かした厚みのある切り方にすると印象が変わり、特に漬け物にすると大変美味であるという体験談が加えられました。
 料理は、加賀太の煮物ほたて風味、たたききゅうりは塩昆布風味と赤しそ風味の2種、ナムルはブルームレスと、四葉・四川の歯ごたえの違うきゅうりを使った2種。いずれも、きゅうりをたっぷりいただけるレシピで、大変好評でした。

【旬の食材:梅】
 梅は、この時期だけのまさに旬のもの。梅シロップやジュース、梅ジャム、梅びしおなど、家庭で手軽に作る方法を教えていただき、試食しました。梅ジュースの牛乳割りが新鮮な味わいで、特に人気でした。
紅南高
梅ジャム
梅シロップ
 
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