タイトル<野菜の学校>
● 2009年度「野菜の学校」 ●
- 2010年2月授業のレポート -
開催日: 2010年2月6日(土) 会場:東京都青果物商業協同組合会議室

◆テーマ野菜:ダイコン

◆旬野菜:春菊

【講義】
(1)

「三浦農業(ダイコン)の概要」
神奈川県三浦市農協 共販部 高梨正夫氏

(2)

栄養、調理保存
M-cooking-studio 松村眞由子氏

(3)

市場情報、出品品目紹介
東京青果(株) 澤田勇治氏

【講義より】
 ダイコンは、地中海沿岸または中央アジア周辺地域を原産地とするといわれており、まだ定説はありません。エジプトのピラミッド建設に従事した労働者がタマネギ・ニンニクなどとともに食べていた、という記録が残されているほどその歴史は古く、古代から栽培されている野菜です。現在、世界のダイコンは、大別してヨーロッパダイコン、中国ダイコン、日本ダイコンの3つに分けられます。

 日本へは、シルクロードを経て中国から朝鮮半島を経由して渡来したとされ、万葉集などでは、春の七草のひとつ「スズシロ」という古名で歌われています。ダイコンは日本各地に分布し、その土地の風土に適合した品種となっていきました。現在でも、数多くの地域的な品種がみられます。

 「三浦ダイコン」については、相模風土記(1841年)に、「円坊村の名主から“ねずみダイコン”が徳川家に献上された」との記録があり、明治に入ってから、風土記に書かれた円坊村の名を取って“円坊ダイコン”と呼ばれていましたが、自家利用がほとんどでした。1902(明治35)年以降に、当時の農会職員が、東京で栽培されていた練馬系ダイコンなどとの交雑改良を試み、形状の改良選抜がされ、1925(大正14)年に、三浦産のダイコンを正式に「三浦ダイコン」と命名しました。農家自らの品種改良とともに栽培面積、販売量も増え、昭和に入ると、「冬のダイコンは三浦でなければ!」と、関東の市場から評価されるようになり、半世紀に渡って関東の市場で冬ダイコンの王者としての地位を保ち続けました。しかし、青首ダイコンが登場し、またたく間に全国の市場を占有するに至りました。さらに、昭和54年に大型台風にみまわれたこともあって、50年代終わりには青首ダイコンにとって代わられ、「三浦ダイコン」の出荷量は全体の1%に満たない数量になりました。現在では、年末を中心に販売されています。

 三浦市は三浦半島の最南端に位置する人口5万人ほどの地域です。三方を海に囲まれた海洋性気候で、地形は起伏に富み、南部では無霜地帯もある温暖な気候を活かしたダイコン、キャベツ等の露地栽培中心の農業が盛んです。栽培面積に比して収穫量が多い理由は、土作りに重点を置き、牛糞を使用した堆肥小屋による有機肥料作り、7〜8月は土壌診断をし、畑の条件を良くして、畝間作を利用した効率よい耕作を試みています。植え付けはシーダーテープを使った播種方法を採用して形状のバラツキを防ぎ、品種の統一をはかりかつ、食生活の多様化に対応、用途別にダイコンを作り分けています。

【ダイコンの食べ比べ】
 5品目:生食、和風煮(青首、本三浦、聖護院、桜島、練馬)
 その他:他品種を生食で、ダイコン餅(各種混合)、焼きダイコン(黒、練馬)

 ダイコンの展示は16品種。その中から、次の5種を生食と和風煮で食べ比べました。

  1. 青首ダイコン 
    神奈川県三浦産。最も多く食べられている。
  2. 本三浦ダイコン
    神奈川県三浦産。固定種。かつては多く食べられていたが、最近は年末に需要がある。
  3. 練馬ダイコン
    東京都産。前日、スタッフが畑に行き、抜いてきたもの。伝統野菜として復活。
  4. 聖護院ダイコン
    京都府産。固定種。
  5. 桜島ダイコン
    鹿児島県産。固定種。世界最大のダイコン。

1.青首ダイコン

2.本三浦ダイコン

5.桜島ダイコン

3.練馬ダイコン

4.聖護院ダイコン
 関東では、桜島ダイコンを店頭で見かけることはなく、スタッフにとっても初めての調理体験でした。包丁の刃を桜島ダイコンに当てたとき、最初はカボチャのような固さを予想していましたが、刃がスッと進み、だからといってフカフカではなく、身はしっかりとしていました。煮込みにも特に時間を要しませんでした。

 食べ比べの感想は、「本三浦の和風煮は苦みがあり、なんておいしいのでしょう!」というのがあった一方で「苦みが出るので生食向きでは…」というものも。その他、「聖護院の生は柿のような甘い香りがあり、煮物は緻密で味の沁みるダイコン」、「桜島は肉質が緻密で、煮崩れしない煮物ができる」、「練馬はみずみずしくておいしい」など。「青首は他の4種と比べると、味も素っ気もない」と、辛口の感想もありました。他の生食の試食と合わせ、生食の香りの感想と加熱したダイコンの違いが際立っていました。また、季節による味の違いの指摘もありました。

 展示および生食の試食品目は以下の通りです。

  1. 亀戸ダイコン:東葛飾中央。固定種。
  2. レディサラダ:JA三浦。三浦×外国品種。
  3. 紅芯:遠州中央。天安紅芯。
  4. 辛味ダイコン:群馬県。あじから。
  5. 黒ダイコン:三浦。黒長・丸。
  6. ミニダイコン:茨城県。白姫二十日。
  7. 貝割れダイコン:埼玉県。スプラウト。
  8. 打木源助ダイコン:金沢。
  9. 味一:シンジェッタ。
  10. 甘っこ:群馬県。あじから。
  11. 新三浦:埼玉県。無肥料。固定種。野口種苗。
6.亀戸
7.レディサラダ
8.紅芯
9.辛味
10.黒
11.ミニ
12.貝割れ
13.打木源助
14.味一
15.甘っこ
   
 

<試食>
 食べ比べとは別に、簡単に作れて、ダイコンがたくさんおいしく食べられる料理も紹介しました。

 黒ダイコンを使った「焼きダイコン」は、バターとサラダ油の割合が1:1、オーブン焼きにし、焼き上がったら醤油をかけるだけ。ダイコンの甘さがじゅわっと口に広がります。黒だけでなく、どのダイコンでもできます。フライパンで焼くときは、フタをして焼くのがコツ。

 ダイコン餅は、ダイコンをすってザルに入れ、水けをザッときり、片栗粉を加え混ぜ、サラダ油をひいたフライパンで焼きます。焼き上がったら醤油をかけます。食感が面白く、砂糖は不要。おやつにぴったりです。

 漬物は「たくあん」の市販品(健白、練馬、東光寺の3種)を試食しました。

 ダイコンを使った料理のレシピは【栄養と料理、保存】の講義時に松村眞由子さんから紹介があり、ホームページで公開しています。ぜひご覧ください。


焼きダイコン(黒)


ダイコン餅


健白のたくあん

練馬のたくあん

東光寺のたくあん
【旬野菜:春菊】

 春菊は、中葉形、大葉形、サラダ用の3種です。Aの「中葉」(栃木県、里ゆたか)は、関東地区の株立。Bの「大葉」(京都府、商品名おたふく)は、主に中国、九州地方で栽培されています。Cの「サラダ」(商品名スティック)は、茨城県の水耕栽培です。大葉と中葉は茹でてごま和えに、サラダ用春菊は生食、ドレッシングで和えました。香りに好き嫌いがあるからでしょうか、最近の春菊は全体に香りが淡い印象を受けました。


A.中葉春菊

B.大葉春菊

C.サラダ春菊

中葉春菊のごま和え

大葉春菊のごま和え

サラダ春菊のドレッシング和え
 
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