●「ブロッコリー・カリフラワー2009」報告-2●
―需給の現状を論じ、需要拡大の可能性を探るー
【開会挨拶】
 
名誉理事長 鈴木康司
 ブロッコリー、カリフラワーが現在のように急速に増加したのは稲作転換と、流通過程による鮮度保持技術が発達したこと、栄養価の高い緑黄色野菜として国民の栄養意識が高まったことによります。今日のお集まりの皆さんで活発な議論をしていただき、輸入物に負けないブロッコリーをどうやって作るべきか、またわが国の将来はどうあるべきか研究していただきたいと思います。
【講演1】
「今後の野菜政策とブロッコリー・カリフラワー需給の動向」
農水省生産局園芸課流通加工対策室長 菱沼 義久氏
 野菜生産や価格動向、農水省の政策について解説された。
  • ブロッコリーの世界の生産量は2007年度で、約1,911万t 。なかでも中国は859万t(45%)と圧倒的で、その殆どは日本など世界各国への輸出用である。

  • 国内の生産状況は中国、アメリカ産の入荷量が減少傾向にあって、消費量が増えているので増加傾向で、同年で12.5万tである。生産県は北海道、愛知県、埼玉県が上位1.5万t以上、続いて長野県、香川県等となっている。近年埼玉県の生産量が増加しているが、これは水田転作によるものである。

  • カリフラワーは国内流通するものは国産で、全国で2.5万t で徳島県、愛知県、茨城県、長野県、熊本県が主産地となっている。

  • 栄養成分:緑黄色野菜でビタミンC、カロテン、鉄、食物繊維などの栄養素が相対的に高い野菜。ブロッコリーのスプラウトに多い抗がん作用「スルフォラファン」に注目。

  • 野菜の消費をさらに伸ばして行くには「栄養価が高い」とか「機能性・健康保持面」を全面に宣伝すべきである。そのためには生産者だけが努力しても限界があり、野菜に携わる流通、加工、調理の方々も一緒になって「産地を形成するには、どういう場所に、どんな物が、いつ頃、高く売れるのか」を考えなくてはならない。

  • 中国野菜はトレサビリティなど安全面で問題があったが、現在は国策で急速に改善が進められ、「指定(示範)農場」を作るなどして日本への輸出に力を入れ、わが国の野菜生産には今後も厳しい状況が続くが、安心安全の付加価値の高い野菜生産を伸ばしていきたいと述べた。
【講演2】
「ブロッコリー・カリフラワーの品種と栄養価・機能性について」
 野菜茶業研究場 野菜育種チーム 主任研究員 石田 正彦氏

 国内での栽培歴史や現状、品種、栄養性と機能性について解説された。

  • ブロッコリーは地中海沿岸東部(?)原産、ケールが起源。16世紀以降にイタリアで発達、各ヨーロッパに伝播。19世紀以降にアメリカに導入、1980年より日本に普及。カリフラワーはブロッコリーの突然変異。16〜17世紀ヨーロッパ、19世紀以降アメリカ東南アジア、1965年より日本に普及。

  • 指定野菜14品目に準ずる特定野菜28品目に入る重要野菜。

  • 近年のブロッコリーの品種改良動向として
    1) 形態の改良 花茎の太さ・頂花蕾型・花蕾の緑色が濃い(アントシアニンフリー)・草型(立ち葉)・花蕾の締まり・緻密さ・そろい 
    2) 作型適応性の拡大 4〜5月穫り可能な早生、あるいは晩生種 
    3) 成分品質改良 機能性(スルフォラファン)含有の向上

  • ブロッコリー中のスルフォラファンと機能性・・・・発がん物質の無毒化
    グルコラファニン(グルコシノレート)→スルフォラファン(イソチオシアネート)
    1) 解毒酵素、化学発がん抑制、抗腫瘍活性 
    2) 細胞内グルタテオンレベルの上昇
    3) 抗酸化活性 
    4) ピロリ菌除去作用 
    5 )紫外線による目(網膜)の酸化障害を抑制
    6) 抗高血圧

  • 今後の課題
    1) 栽培容易 
    2) 栄養性や機能性を重視(品種間差がある) 
    3)多彩な形態 等が育種目標課題である。
【講演3】
「スーパーから見たブロッコリー・カリフラワーの魅力」
 (株)西友商品本部青果部 バイヤー 芳川 和美氏

 (株)西友の初の女性バイヤーとして、個性的な売り場を作って実践し、全国産地を回って現場の声、店頭に於ける消費者の求める商品はいかなるものか、チャートなどを使用し分析・紹介された。

  • 西友のブロッコリー販売量は年間を通じて安定している。ブロッコリーとカリフラワーの青果での構成比は1.5% と0.03%であり、西友はアメリカにブロッコリー契約産地があり輸入の割合が高く70%で、年間97円で販売している(下限価格・特売時88円〜上限価格161円)。一方、国産ブロッコリーは秋〜春に需要が伸びており、128〜250円の価格設定。

  • カリフラワーはすべて国産で150〜250円で設定しているが、需要が少なくスポットで品揃えする商品に移行している。

  • ブロッコリーは緑黄色野菜として消費者の受けがよく消費が拡大し、重点商品に成長した。しかし来店者の消費動向は現在の世情を反映して「低価格帯商品」にシフトしている。

  • アメリカのブロッコリーは今まで残留農薬が検出されたことはなく安心感があったが、日本と同様「石油価格上昇」「資材価格高騰」あるいは「景気の影響」を受けて生産量が減少しているらしい。 

  • 野菜の自給率を高めるには「流通の仕組みを刷新」することが必要と力説された(注: 販売価格の内、野菜生産費40% 流通コスト60%の現状がある) 。小売店も産地に出向いて生産者と話し合いをして交渉することに取り組んでいる。
 

ブロッコリー・カリフラワー2009
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