タイトル<野菜の学校>
● 2012年度「野菜の学校」 ●
- 2012年4月授業のレポート -

 野菜の学校では、この2年間、「日本の伝統野菜・地方野菜」の講座を展開し、大変好評を博しました。今期も引き続き同じテーマで、これまで取り上げられなかった地方の、できるだけその時期の伝統野菜・地方野菜を数種取り上げます。授業は主に、「その地の専門家の講義」、「伝統野菜1種の他、地方産やハイブリッド種などとの食べくらべ」、「それぞれの野菜を生かした料理の試食」、「受講生の意見交換」で構成しています。
 毎回の講座を通して、これほど多様性のある力強い野菜があったことを再発見すると共に、各地で伝統野菜の復活に取り組む方たちのネットワーク作りにも、少しでもお役に立てればと願っています。

開催日:
2012年4月7日(土)
会場:

東京都青果物商業協同組合会議室

テーマ:

江戸東京野菜「亀戸だいこん、みのわせだいこん、のらぼう菜、三河島菜、東京うど、後関晩生、滝野川ごぼう、わけぎ、しんとり菜、真菜、小松菜」

スタッフ:
スタッフリスト
 江戸東京野菜は、一昨年7月に続いて2回目の登場です。今回も講師を務めてくださった大竹道茂氏のご活躍で、ますます普及していく勢いです。
 言うまでもなく、伝統野菜は旬がごく短いため、月が変わればまったく違う野菜が出そろいます。前回は夏の寺島なすが中心でしたが、今回は春ののらぼう菜が食べくらべのテーマ。いわゆる茎立ち菜としては、終了ギリギリのタイミングでしたが、生産者のご協力でどうにか間に合い、この時季の他の貴重な江戸東京野菜も加わって、伝統野菜をテーマにして3年目にふさわしい、にぎやかなスタートになりました。
【講義】

「江戸東京野菜」

江戸東京・伝統野菜研究会代表 大竹道茂(おおたけ みちしげ)氏

 江戸東京・伝統野菜研究会代表。JA東京中央会で1989年より江戸東京野菜復活に取り組む。農林水産省選定「地産地消の仕事人・江戸東京野菜コンシェルジュ育成協議会会長。NPOミュゼダグリ理事。「食と農の応援団」(農文協)団員。江戸東京野菜推進委員会(JA東京中央会)委員。農政ジャーナリストの会会員ほか。食と農、伝統野菜に関する多数の役職に就く。著書に『江戸東京野菜(物語篇)』、監修に『江戸東京野菜(図鑑篇)』(いずれも農文協)。ブログ「大竹道茂の江戸東京野菜ネット」、「江戸東京野菜通信」で情報を発信中。
(今月の伝統野菜に関しては、後述の作物紹介の欄も参照ください。)

講義内容の詳細はこちら

 ☆   ☆   ☆

●東京青果(株)の宮坂守文氏からは、最近の市場情報として、昨年の震災の影響で、野菜の市場入荷量が減っているとの情報が提供されました。特に大根は九州からも入れているものの、例年の1/2量。ただ単価は2.7倍にとどまっているとのこと。今月の食べくらべのテーマである「のらぼう菜」は、旬の野菜で、総称は「なばな」。なばなは、千葉からの入荷が圧倒的で、館山、君津などの房総半島が栽培の中心です。特にこの時期は露地物が主流になっています。なばなはもう少し安く提供できるはずなのにそうならないのは、本来軸まで食べられるものを先のほうしか市場出荷できないためで、もったいないことだといったお話もありました。

●事務局スタッフで、野菜の調達を担当している高橋芳江さんから、今月の野菜の生産者さんからの声の一部が届けられました。
 三河島菜は小平市の宮寺光政さんの栽培によるもの。「三河島菜は栽培に100日くらいかかり、この時期は上部だけを摘むので小さいが、小さいなりにおいしい。また横縞が入ることがあり、それもまったく問題ないのだが、見かけがきれいなものばかり求められる傾向がある。後関晩生はトウ立ちしても、茶色の葉も根っこも食べられることも学んでほしい」。
 のらぼう菜は立川市の清水重雄さんの栽培によるもの。「市場や直売所に出すには、茎を落としてそろえなければならない。おいしい部分を落とすことは本当にしのびない」。
 真菜は世田谷区の大平農園から。小松菜の端境期に作られているものだそうです。

●スタッフである管理栄養士の松村眞由子さんからは、葉もののゆで方のアドバイスがありました。「今日の食べくらべのテーマ野菜である茎立ち菜は、沸騰した湯にまずは茎のほうだけ入れて10秒、全体を沈めて15秒、裏返して15秒ゆでたもの。塩は入れていません。塩を入れるとやわらくなる、色がよくなるなどと言われますが、そのための塩の量はかなり入れないと効果は出ません。青菜をゆでるコツは、たっぷりの熱湯でふたをせずに少量ずつゆでて水にとること。逆に、白菜は元々水っぽい野菜なので、塩を入れると浸透圧の関係で水っぽくならずに仕上がります」。

【食べくらべ】

 江戸東京伝統野菜の「のらぼう菜」と、かき菜(栃木県佐野市の在来種)、菜花(千葉県)をゆでて食べくらべました。

 食べくらべの司会は、野菜の学校アドバイザーでもある山本謙治氏(農産物流通・ITコンサルタント)で、まずは、食べくらべに際してのルールや姿勢がアドバイスされました。


のらぼう菜、かき菜、菜花の食べくらべ

 食べくらべでは、「おいしい・まずい」の表現はタブー、自分なりに評価することが大事です。「見た目」「食感」「香り」「風味」+「各自が決める指標」の5つの指標が挙げられていますが、食感や香りは強弱、食味は濃淡を、チャートに一度には書かず、行き来しながら相対的に評価するとよいそうです。5番目の指標は、各自が、例えば苦さとかエグさ、特別な香りなど、何か気になったり、見つけたものを。それぞれに評価をし、五角形のグラフに記してから、6〜7人のグループ単位で意見交換・発表をします。今回は初回の諸事情で、発表の時間をあまりとれなかったのですが、主な意見をご紹介しましょう。

主な感想・意見はこちら

【当日の江戸東京野菜とその料理】
※植物分類表記は、系統発生解析による新しいAPG分類体系に基づく
※各野菜名をクリックすると詳細ページがご覧いただけます
のらぼう菜 三河島菜
後関晩生小松菜 亀戸だいこん
東京うど 滝野川ごぼう
その他
【その他、全体の感想より】
  • 江戸料理になじんだ味のしっかりしたおいしい料理をいただき、満足しました。

  • どれも美味でした。亀戸だいこんは特によかったです。やわらかくて食べやすい。でも煮くずれしていない!

  • 食べたことのない食材を体験できて楽しかった。調理法も想像もつかないものがうれしかった!

  • 亀戸だいこんの深川汁、おひたし、印象深かったです。深川汁はごはんがモリモリ進みそう。ごぼうもやわらかくておいしかったです。

  • 野菜のよさを生かした料理で、おいしくいただきました。

  • 初めて江戸東京野菜を食べることができ、勉強になりました。野菜嫌いですが、たくさん食べてみたくなりました。

  • うどのバターいためというのがおもしろくおいしかった!

  • 江戸の濃いめの味付けが好みに合います。うどのバターいためは、自分でも作ってみたいと感じました。

  • 深川汁風、おいしかったです。うども気に入りました。葉っぱいろいろを食べられて、幸せでした。

  • 菜花のピークが3月なので、違いを知って商売に生かすためには、2月末〜3月初めにしていただいたほうが、より勉強になると思います。
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