タイトル<野菜の学校>
● 2011年度「野菜の学校」 ●
- 2011年11月授業のレポート -


宮城の伝統野菜・地方野菜

 野菜の学校では、昨期、「日本の伝統野菜・地方野菜」の講座を1年間展開し、大変好評を博しました。今期は引き続き同じテーマで、毎月、昨期に取り上げられなかった一地方の、できるだけその時期の伝統野菜・地方野菜を数種取り上げます。授業は主に、「その地の専門家の講義」、「伝統野菜1種の他、地方産やハイブリッド種などとの食べくらべ」、「それぞれの野菜を生かした料理の試食」、「受講生の意見交換」で構成しています。

開催日:
2011年11月5日(土)
会場:

東京都青果物商業協同組合会議室

テーマ:

宮城の伝統・地方野菜
「仙台伝統雪菜、仙台雪菜、仙台芭蕉菜、曲がりねぎ3種、仙台白菜、小瀬菜大根、在来せり、赤がらからとりいも、青菜(せいさい)、四月しろ菜、蔵王さといも、仙台長なす、宮城産の小松菜・ほうれんそう・トマト4種」

スタッフ:
スタッフリスト
 青菜がおいしくなる寒さには後一息といった陽気が続いていましたが、今月は宮城県の伝統野菜である雪菜をはじめ、周辺の珍しい青菜類も数種とり揃えることができました。講師・渡部憲明氏が属する宮城県の渡辺採種場、仙台駅近くで宮城の伝統野菜を扱う青果商「今庄」さんのご協力があってこそで、各地にある「青菜」の多様性を知る貴重な機会になりました。
【講義】

「宮城伝統野菜・地方野菜」

渡部 憲明(わたなべ けんめい)氏

 渡部氏は(株)渡辺採種場勤務。研究部育種第一課(バイオテクノロジー、植物病理、アブラナ属の育種担当)を経て、現在は企画開発部にて品種改良の企画、カタログ作成、産地や流通の開発などを担当。種苗管理士、シードアドバイザー。宮城普及指導協力委員、県内の農業改良普及センターの検討委員などの公職の他、最近は小学校高学年対象特別理科講師など食育にも関わっておられる。

講義内容の詳細はこちら

 ☆   ☆   ☆

●東京青果(株)の宮坂守文氏からは、市場の状況報告。野菜の入荷量は昨年に比べて105%と若干増えているが、単価は91%と、市場をとりまく環境はきびしいとのこと。震災の影響に加えて、今年は11月にしては暑かったせいもあるようだ。
 青菜に関して、東京青果では茨城のちぢみほうれんそうを先駆けたことに加え、昨年からちぢみ小松菜も手がけています。これはメロン用のビニルハウスを転用できるので、生産者にも都合がいいそうだ。近年、ほうれんそうより小松菜の消費量が増えている傾向があり、平成元年に比べると、ほうれんそうは57%減に対して小松菜11%増という結果。明らかに消費者の好みが変わってきていることがわかる。

●スタッフである管理栄養士の松村眞由子さんからも、ほうれんそうと小松菜では、小松菜のほうを好む傾向が指摘された。ほうれんそうがやわらかく日持ちがしないのに比べ、小松菜のほうが元気で長持ちする。1束がほうれんそう200gに対して小松菜は350g、しかも小松菜はゆでても目減りしにくい。さらに小松菜のほうがアクが少なく、そのままいためてもいいので手軽だ。ザクザク切って、電子レンジに40〜50秒かけ、しょうゆとみりんで調味すると即席漬け状態になるのでお薦めとか。
 今回の雪菜、芭蕉菜は小松菜の仲間なので、食べ方も同じでいいとのこと。カロテン、カルシウム、ビタミンCが豊富なので、風邪の予防や美肌に効果あり。小松菜系はやわらかめにゆでると食べやすいそうだ。

【食べくらべ】

 「仙台伝統雪菜」「仙台雪菜」を「小松菜」と、ゆでて食べくらべました。

 食べくらべのコーディネーターは、スタッフの村野恵子さん。食べくらべは、もちろん、「おいしい・まずい」の表現はタブーです。各自で食べくらべ、「見た目」「食感」「香り」「風味」+「各自が決める指標」の5つの指標それぞれに評価をし、五角形のグラフに記してから、6〜7人のグループ単位で意見交換・発表をします。


仙台伝統雪菜、仙台雪菜、小松菜のゆでたもの

 

主な感想・意見はこちら

【当日の宮城野菜とその料理】渡部先生のお話と併せてご参照ください
※植物分類表記は、系統発生解析による新しいAPG分類体系に基づく
※各野菜名をクリックすると詳細ページがご覧いただけます
仙台白菜 仙台雪菜
仙台芭蕉菜 小瀬菜大根
仙台曲がりねぎ 赤がらからとりいも
その他
【その他、全体の感想より】
  • 同じ品目において、もう少し違った料理方法で食べくらべができればよかったです。が、私にとって初めて食べる品種ばかりで、大変勉強になりました。可能であれば、いろいろと生食してみたかったです。私が住んでいる地域においても、さまざまな野菜の食べくらべを実施して、野菜の大切さ、素晴らしさを皆さんに認識していただきたいと思います。

  • ずっと口の中に青汁の後味のような味が残りました。スイカっぽい味でもあります。よいものですよ。味が濃いのですね。昔の人はおいしい野菜を食べていたのですね。昔は季節ごとに青菜も味が変わり、その違いを楽しんでいたのでしょうね。うらやましいです。これだけ味が濃い青菜なら、しっかりごはんのおかずになりますね。

  • 食べくらべで雪菜、伝統雪菜、小松菜の食味の違いを実感できたことは、貴重な体験でした。例年に比べ温暖な気候が、雪菜の味に影響を及ぼしていることも舌で体感し、改めて気候と作物の味が密接な関係にあることを実感しました。プチぷよトマトは珍しい食感で、印象に残りました。料理だけでなくスイーツとして食べてみたいと思いました。

  • 比較しにくい食材で困りましたが、皆さんの意見に感心。単調になりやすいものをアクセントをつけて料理していただき、おいしくいただきました。

  • 食べくらべでの味の違いを確認し、表現の違いや感じ方を学ぶのはもちろん、今回、トマトの味の違いはとても印象的でした。収穫日の差異で、甘さが違いがわかるほど出てくるのはとてもおもしろかった。

  • 同じアブラナ科でも、仙台雪菜、仙台伝統雪菜、小松菜と、味が全然違いました。プチぷよトマトの食感には驚きました。普段食べることのない野菜を食べられ、勉強になりました。

  • とても難しい食べくらべでしたが、楽しませていただきました。宮城県の農業の位置づけをうかがい、なるほどなと思いました。

  • アブラナ科の葉物野菜には土地の個性があっておもしろいので、もっと多地域のものでくらべてもよいかと思いました。
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